ペットのインターネット販売のトラブルが相次いでいる。栃木県は、劣悪な環境で猫を飼育し、ネットで販売していた県内のペット販売業者を、動物愛護管理法違反の疑いがあるとして、猫では全国初の動物取扱業登録の取り消し処分を検討している。こうしたトラブル急増を重く見て、環境省も犬や猫のネット販売規制に乗り出す方針だ。
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関係者によると、栃木県は22日にも、同県鹿沼市でペット販売仲介業などを営む女性の登録取り消し処分をする方針だ。動物愛護管理法(動愛法)で定められたペット売買の記録やその保管をしないまま、少なくとも22匹の猫を販売。同様に、定められた変更届を出さずに、転居を繰り返した疑いがある。
県によると、この業者をめぐっては、2008年ごろから県外も含め、各地から「ネットで購入した猫が衰弱している」「約束の血統書が付いてこない」などの売買をめぐるトラブルがあり、苦情が寄せられていた。10年には地域住民から「不衛生な状態で猫を飼っている」との通報もあったという。
県は20回以上の立ち入り検査を実施。記録の管理の徹底や、トイレの清掃、クーラーを修理し猫の部屋を適温にすることなどを求め続けてきたという。
かつてこの業者が取り扱う猫が掲載されていたネットのサイトには、この業者への注意を訴える「被害者の会」の文章と連絡先が載っている。会の代表の女性(64)によると、既に四国や北陸、関西地方などから10件ほどの被害の相談があったという。
■国、規制強化へ
トラブルの背景には、動物取扱業の登録のしやすさと、飼育の現場やペットの状態を見せないまま販売が可能なネット販売の問題がある。
自治体により違いはあるが、動物取扱業は基本的には事業の責任者の氏名や事業所の所在地などを記載して申請すれば登録できる。氏名が実名かなどの確認もしていないという。行政から注意を受けて自主廃業したとしても再登録できる。取り消し処分が出ても、2年たてば登録申請が出来る。
環境省がネット販売規制の対象として考えているのは、ネット上に犬や猫の写真を掲示して購入者を募り、電話などによる説明だけで、実物とは一度も対面させないまま販売している業者。客の購入前に必ず犬や猫と対面させ、特性や飼い方の説明を義務づける方向で、動愛法の改正も視野に検討を進めている。
環境省の調査によれば、ネットオークションだけでも07~08年の2年間で犬計1万2641匹、猫計1887匹が落札された。このうち何匹が対面しないで販売されたかは把握できていない。
ネットを主とするペットの通信販売をめぐっては、購入者側と販売側がトラブルになるケースが急増。国民生活センターのまとめでは、犬や猫などを中心に00年度の71件から、09年度には329件に増えた。犬や猫にとどまらず、「プレーリードッグを買ったが、届いて2日で死んでしまった」「『飼いやすい』と言われて買ったフクロウがなつかなかった」といった訴えもあった。トラブルの広がりを受け、環境省は中央環境審議会の小委員会で対応策を検討、3月をめどに規制の概要を固める。
ネット販売の規制は動物愛護団体が求めているほか、ペット小売店などでつくる全国ペット協会(事務局・東京)も「購入後のフォローが十分にできない」と規制に賛成。一方、ペットのネット販売サイトを運営する業者からは「繁殖家から消費者へペットを直接譲り渡しており、動物愛護の観点から理想的。まず禁止すべきは(ペットにストレスを与える可能性がある)ショップの陳列だ」と反論があがっている。
(朝日新聞2011年2月22日付)